不動産登記 が必要になるのは、主に以下のような場合です。
※不動産の「登記事項証明書」の見方がわからない方は、先にこちらの記事をご覧いただくと、以降の説明がわかりやすくなると思います。
最近では関連書籍や紹介サイトも増え、ご自身で登記をするために必要な情報が、以前に比べると格段に手に入りやすくなっています。
登記は必ず司法書士がおこなわなければならないといった決まりはありませんので、単純な登記に関しては、費用が抑えられる分、ご自身で済ませてしまおうとお考えの方も多いと思われます。
しかし、登記の手続きにあたっては、申請書類の記載様式や申請書類以外に提出しなければならない添付書類が厳密に定められており、同じような登記でもケースによって申請時に必要とされる書類や申請書類の記入内容が異なるため、何がどこまで必要なのかは専門の知識を持っていないと判断がつかない場合もあります(例えば、下記に紹介する 「所有権移転登記」 でも、不動産を購入した場合と相続した場合とでは、申請時に添付する書類(登記原因証明情報)が異なります)。
万一、誤った登記をしてしまった場合、皆さまの大切な家や土地の権利が失われてしまうといったことにもなりかねません。
不動産登記 についてわからないことがあれば、 専門家である当事務所に、ぜひ一度ご相談ください。
所有者の住所・氏名(本店・商号)の変更をした場合の登記
必要な登記
所有権登記名義人表示変更登記
不動産を所有している方が、結婚などで姓が変わった場合、転勤で住所が変わった場合には、登記名義人の住所・氏名の変更登記が必要となります。
また、不動産を所有している法人が本店を移転した場合や商号変更をした場合も、同様に変更の登記が必要となります。
(本店移転、商号変更については、変更登記のページも併せてご覧ください)
気を付けなければならないのは、「住居表示の実施」がおこなわれた区域にお住まいの方も、住所の変更登記が必要となる場合があるということです。
明治時代の初めごろには、住所を示すために土地の番号を表す地番を使用していましたが、土地の地番は順序どおり並んでいないことが多くあったため、探している建物が見つけづらいといった問題がありました。そこで、建物に順序よく番号を付け、その番号を住所とすることで 建物を探しやすくするための「住居表示」が実施されました。
住居表示が実施されると、町名等が変わります。町名の変更は自動的に行われるため、不動産登記簿の表題部(所在や所有者、建物の場合は構造や広さなどが書かれてある部分)に関しては変更の手続きは必要ありません。しかし、権利部(所有権や抵当権などその不動産に関する権利の状況について書かれてある部分)に記されてある所有者の住所は、住居表示実施後も自動で変更されないため、もし、所有権の登記を住居表示実施前に行っていた場合、改めて、住所変更の登記が必要となります。
家や土地の購入・相続・贈与・分与があった際の登記
必要な登記
新築の土地付き一戸建てを購入した場合…建物表題登記(土地家屋調査士)・所有権保存登記(建物)・所有権移転登記(土地)
土地付き中古住宅、マンションを購入した、または、相続、贈与、分与があった場合…所有権移転登記(土地・建物)
土地のみを購入した、または相続、贈与、分与があった場合…所有権移転登記(土地)
以下、それぞれのケースについて説明いたします。
「新築の土地付き一戸建て」を購入した場合
当然ですが、新しい建物なのでまだ登記がされておりません。そのため、まず初めに不動産の状態、建物の所在地・種類や構造・広さ・所有者を記録する登記をおこなう必要があります。
これらは不動産登記簿の表題部(一番上の部分)に記載されますが、この登記のことを「建物表題登記」といい、計測した図面などを基に、土地家屋調査士が登記をおこないます(なお、当事務所では、土地家屋調査士事務所と提携していますので、ワンストップで全ての登記を行うことができます)。
表題部の登記が完了した後、その建物の権利を有しているのは誰かということを新たに書き加える必要があります。この登記のことを「所有権保存登記」といいます。
不動産の権利関係を示す権利部には、土地や建物にかかる権利に関する登記が記載されます。
権利部の甲区(上側)には、 所有者の住所・氏名・登記の目的・取得年月日・取得原因といった、所有権に関する事項が記載されます。
その土地の所有者は 「登記簿」にそれらが記載されているという「証拠」によって、自身の所有権を主張できるようになります(これを法律用語で「対抗力」といいます)。
表題部に記載されている「所有者」には登記としての対抗力がありません。そのため、権利部に所有権の記載をおこなうことで対抗力を備える必要があるのです。
ほとんどの場合、不動産の状況を記載する「表題登記」と、ご自身の不動産の所有権を主張するための「所有権保存登記」は同時におこないます。
なお、表題登記は必須ですが、所有権保存登記は一応、所有者の任意ということになっています。
ただ、売買や贈与などで家や土地の所有権が他の人に移った場合(所有権移転)や、不動産を担保にお金を借りた際の抵当権の設定を行わなければならない場合(抵当権設定)、等、権利の変動があった際におこなう各登記は、所有権保存登記がされていることが前提となり、不動産の売買や譲渡、不動産を担保にした借入といったことが将来にわたって絶対に無いということはありえませんので、結局のところ、所有権保存登記はしておかなくてはならないということになります。
土地付き中古住宅、マンション、土地のみの購入・相続・贈与・分与の場合
家や土地の所有権が何らかの事情で他の人に移った際におこなうのが「所有権移転登記」です。
中古住宅の場合はその建物が新しく建てられた際、「建物表題登記」「所有権保存登記」を終えていますので、ここでは「所有権移転登記」のみでよいということになります。「所有権移転登記」は所有者が変わった建物・土地それぞれにおこなう必要があります。
所有権移転登記をいつまでにおこなわなければならないかは、法律上、特に定められた期限はありませんが、売買や譲渡の場合、契約をまとめた当日中の申請が望ましいとされています。
また、相続(遺言も含みます)が原因での所有権移転については、相続や遺言による所有権の取得を知った日から、または、遺産分割が成立した日から3年以内に登記を完了させることとなっています(不動産の相続については、下記、「不動産の所有者が亡くなった場合の登記」の項目と、相続のページをご参照ください)。
また、離婚による不動産の財産分与は、離婚のページも併せてご覧ください。
家や土地を担保に融資を受けた、住宅ローンの借り換え・完済をした場合の登記
必要な登記
不動産を担保に融資を受けた、住宅ローンの借り換えをした…抵当権設定登記
住宅ローンの完済をした…抵当権抹消登記
抵当権とは、債務不履行の際、担保について、他の債権者に優先して弁済を受けられる権利のことです。
抵当権設定登記が必要になるのは、以下のような場合が考えられます。
- 住宅ローンを組む場合
- 住宅ローンの借り換えをする場合
- 不動産を担保にして事業資金を融資してもらう場合
- 不動産投資をする場合
抵当権はあくまでも貸したお金を返してもらえる権利を補強するためのものですので、 どのケースにしてもまずは、金融機関といくらのお金を貸し借りしましたといった契約(金銭消費貸借契約)を結び、その後に抵当権設定の登記をおこなうといった流れになります。
その際、抵当権の設定に関連する不動産の所有者が転居などで、登記上の住所と現在の住所が異なっている場合には、住所移転の「表示変更登記」も併せて必要になります。
また、ローンを組んで不動産を購入する場合、新築の場合は「所有権保存」、それ以外は「所有権移転」の登記も同時におこなわなければなりません。
気を付けなければならないのは、借入金の返済が完了した場合、抵当権の抹消登記をおこなわなければならないということです。
借入の際に設定した抵当権は、借入金を完済すると自動的に消えるものではありませんので、ご自身で(もしくは司法書士に依頼するなどして)抵当権の抹消登記をおこなう必要があります。
なお、抵当権の抹消登記は、完済後、速やかにおこなうことをお勧めします。
- その不動産の売却ができなくなる
- その不動産を担保にした新たな借入ができなくなる
- その不動産が相続の対象となった場合、相続人が複数にわたるケースなどで手続きが複雑化する
- 借り入れた金融機関が合併した場合、抵当権抹消登記に必要な、完済を証明する書類の再取り寄せが困難になる
などのデメリットが生ずるからです。
完済を証明する書類は、完済後に借り入れをした金融機関から送られてきますが、有効期限が発行から3か月間となっています
普通に住宅ローンを最後まで払い終わった場合は、ご自身で抵当権抹消の登記をおこなうことも可能ですが、途中で不動産を売却して金融機関に借入残金を一括返済する場合は、売却の相手方や金融機関との万一のトラブルを避けるためにも、登記を司法書士にお任せいただいたほうが安心です。
不動産の所有者が亡くなった場合の登記
必要な登記
所有権移転登記(相続)
不動産の所有者が亡くなって、相続が発生した場合、土地や建物をそのまま相続する場合は、相続人への名義変更(相続登記)を行わなければなりません(相続のページもご参照ください)。
令和6年から相続登記の義務化が開始されたため、以下の点については注意する必要があります。
- 相続による不動産取得を知った日から3年以内に正当な理由なく手続きをおこなわない場合、10万円以下の過料が科される場合がある
- 施行日(令和6年4月1日)以前の相続についても義務化が適用される
相続した不動産を担保に入れてお金を借りたり売却したりする場合は、いったん亡くなった方の名義から相続人の名義に変更する必要があります。
また、相続が発生してから長期間経過後に手続きをしようとすると、被相続人との関係性を証明するために必要な戸籍などの収集に手間がかかったり、最初の相続発生時から何代か経ってしまった後だと、更に次の相続が発生して相続関係が複雑となり、相続人の間での話し合いや相続人の追跡が困難になったりすることがあります。
不要なトラブルの火種を将来世代に遺さないためにも、相続が発生したら、できるだけ早めに相続登記されることをお勧めします。
なお、相続した土地の地目が「田」「畑」の場合、別途、農業委員会への「農地法第3条3の規定による届け出」が必要となります。